食事の後片付けをしてリビングに戻ると、谷村さんはベッドの上で壁にもたれてテレビを眺めていた。テレビを見るなら背もたれのついたソファの方が心地良いはずだけど、あえてベッドを選んだのは疲れているせいかもしれない。今日は土曜日だけれども、谷村さんは仕事を終えてからわたしの部屋に来ていたし、ゆっくりくつろぎたいのだろう。

谷村さんにつられるように、わたしもソファを通り過ぎてベッドに向かうと、スリッパを脱いで谷村さんの隣に腰を下ろす。すると、テレビを見ていた谷村さんの視線がくるりとこちらを向いた。視線に気付いて隣を見上げれば、わたしを見下ろす谷村さんの瞳の奥がどことなく悪戯っぽく輝いている。(ん…?)驚いてその表情の裏にある心理を読み取ろうとした時、端正な唇が言葉を紡いだ。

、そっちじゃなくてさ」
「え?」
「ここ」

そういうと、谷村さんは自分の脚の間にあるスペースを綺麗な形の手でぽん、と叩いた。どうやら、脚の間のスペースに座るように促しているらしい。突然の要求に気恥ずかしさを感じながらも、促されるままにもぞもぞとベッドの上を這って、谷村さんの脚の間にちょこんと腰を下ろす。谷村さんは背が高くて手足も長いけれども、さすがにこの空間ではやっぱり少し狭くて、わたしは谷村さんの脚の間でスカートの裾に気を配りながらそっと膝を立てる。こうしていると、谷村さんの体に包まれているような気分になった。

「そう」

耳の横で聞こえる谷村さんの声はどこか楽しげだった。ふと息をすれば、吸い込む空気に谷村さんの洗剤のような清潔感のあるいい匂いがする。ということは、わたしの匂いも谷村さんに届いているのだろうか。お風呂には勿論入っているし、洋服もきちんと洗濯しているけれども、良い香りの人に自分の香りをかがれるのは、どことなく気恥ずかしさがある。気付かれないようにそっと身じろぐと、不意に谷村さんの右手がわたしの膝に触れた。

谷村さんの手が、感触を確かめるようにわたしの膝を撫でる。さらさらとした手のひらが、わたしの膝を降りて、今度は太腿の外側をゆっくりと撫でる。決していやらしい触り方ではなかったけれども、わたしはその行動で確信した。きっと谷村さんは、こうやってちょっかいを出すためにわたしを脚の間に呼んだのだ。ここなら谷村さんの場所からでも触りやすいし、そう簡単には逃げられない。きっと今頃わたしのうなじの辺りで谷村さんは意地悪な笑顔を浮かべているだろう。

特別いやらしいことをされている訳ではないし、そもそも恋人同士なのだからあえて抵抗する理由もない。わたしは谷村さんの手にされるがままになりながら、そのままぼんやりとテレビを眺める。テレビにはファミリー向けのクイズ番組が流れていて、難読漢字の読み仮名の問題で画面に大きく『束子』の文字が映し出されている。想像もつかなくて少し首を捻ると、耳元で掠れた声が響いた。

「“たわし”だろ」
「え?ほんとですか?」
「ああ」

谷村さんの声がしてすぐに、画面が『たわし』の文字が映し出される。感動して思わず小さく声を上げると、耳元でふ、と小さな笑い声が響いた。と同時に、谷村さんの手のひらがもう一度膝にもどって、そして今度はわたしの内腿に滑り降りてくる。谷村さんの手のひらが割り込んだことで脚が開かれてはしたない格好になってしまったけれども、この部屋にはわたしと谷村さんしかいないし、谷村さんもわたしの後ろにいる。気にすることもないとそのままテレビに意識を戻すと、次の問題に続いた。画面には『轆轤』の文字が写される。

「これは…うーんと…」
「“ろくろ”」
「…ほんとですか?」
「本当」

谷村さんの大きな手のひらが、わたしの内腿をまさぐるようにいったりきたりしている。何となくくすぐったさを感じながらもテレビの画面に意識を集中させていると、すぐに『ろくろ』の文字が映し出されて、わたしは驚いて声を上げる。谷村さんはきっと頭が良い人だろうとは思っていたけれども、知識もわたしなんかとは全然違って…とその瞬間、谷村さんの右手がわたしの脚の付け根を撫でた。突然敏感なところを撫でられて脚がぴくっと跳ねたけれども、きっと何気なく手が触っただけなのだろうと特に気にせず意識を戻す。画面には、『流離』の文字が映し出された。

「えっと…うーん…“りゅうり”?」
「どうかな?」
「…谷村さん、答え知ってるんでしょ」
「さあ」

その声色は笑っていたので、きっと谷村さんは答えを知っていて、わたしは間違ったことを言ったのだろう。悔しくて少し唇を尖らせると、また谷村さんの手が脚の付け根を辿るようにゆっくりと撫でる。ゆっくり触られてもくすぐったくて、谷村さんの指先がそこに触れるたびに腰がびくっと跳ねる。できるだけそちらに気をとられないようにしながら正解を待っていると、画面には『さすらい』の文字が映し出された。

「う…」
「残念だったな」
「…谷村さん、ほんとは正解知ってたくせに」
「どうだか?」

少し癖のある、掠れた笑い声。明らかにわたしのことをからかって、馬鹿にしていた。なんとなく悔しくて頬を膨らませて拗ねていると、今度は谷村さんの左手がわたしの脚に伸びてきた。わたしの膝の内側に手を入れて更に大きく脚を開かせると、そのまま内腿を滑り、右手と同じように脚の付け根を撫でる。左手まで脚の付け根に置かれたことで、もう脚が閉じられなくなってしまった。少し意識をそちらにとられているうちに、再び画面に『蝸牛』の文字が映される。開かれた脚に気をとられながらも、必死に頭を回転させた。

「か…か…」
「“かた、」
「かた…かた…」
「“かたつ、」
「かたつ…“かたつむり”?」

嬉しくて思わず声を上げたその瞬間、画面に『かたつむり』の文字が映された。嬉しくて思わず笑みを浮かべると、不意に谷村さんの手がわたしの脚の付け根をくすぐるように指先で辿る。やはりくすぐったくて腰が跳ね、慌てて脚を閉じようとしたところを谷村さんの左手が押さえ込んだ。さすがに恥ずかしくなってきて、わたしは後ろの谷村さんにそっと声をかけた。

「ねぇ谷村さん…それ、くすぐったいです」
「くすぐったい?どこが?」
「いま触ってるところ、」
「ここ?」

谷村さんの指の腹が、ゆっくりとわたしの脚の付け根をなでる。堪えようと身構えたけれどもやっぱりくすぐったくて「やっ」と思わず小さな悲鳴が漏れ、わたしの腰はびくっと跳ね上がった。くすぐられた余韻で心臓をどきどきさせながら身構えていると、谷村さんはますます楽しげな声で囁いた。

「くすぐったい?」
「くすぐったいですよ、もう…」
「“気持ちいい”じゃなくて?」
「え…」

思いがけない言葉に目を見開いた瞬間、わたしの脚の付け根をなでていた谷村さんの手のひらがするりと滑り、下着越しにわたしの脚の間の裂け目を撫でた。敏感なところに突然触れられて、思わず腰が跳ねて吐息が漏れる。咄嗟に閉じようとした脚を左手でしっかり押さえつけながら、右手の中指の腹で下着の上からゆっくりと谷間を撫で、裂け目をくすぐる。急に触れられたはずなのに、わたしのそこは既に谷村さんの指の動きに反応を示していた。

「あ…っ」
「ほら」

谷村さんの言葉通り、わたしのそこは下着越しに数回つうと撫でられただけで容易く潤びた。数秒前まで全く予期していなかった強い快感に突如として全身を支配され、体に力が入らなくなる。下着越しに何度もやってくる指先の刺激に谷村さんの体に背中を預けて酔い痴れていると、わたしの脚を押さえていた左手が滑るように内腿を優しく撫でた。

「確かめてみるか」

耳元で悪戯っぽい吐息が響いたかと思うと、谷村さんの指先はわたしの下着の脚の付け根の隙間から敏感なところにするりと潜り込んだ。そしてその指は迷わずわたしの裂け目にたどり着くと、潤びたそこをくすぐるように指先で弄る。甘い快感に腰が跳ね、思わず声が漏れる。そして下着の中のそこは、谷村さんの指が動くたびにくちゅくちゅと濡れた音を漏らしていた。

「ほらな?」
「やっ…あ、…っ」

裂け目の入り口を何度も指先でくすぐられて、その度にびくっと跳ねる腰を左手に押さえられる。谷村さんは指の腹にわたしのそこから滴ったぬめった蜜を絡ませると、そのまま裂け目を伝って上部にある敏感な突起を撫でる。全身の中でも一番敏感なところをゆるゆると愛撫されて、思わず甘い声が漏れる。谷村さんは見つけた突起を指の腹で円を描くようにゆっくりと撫でながら、わたしの耳元に掠れた声で囁いた。

「やっぱり“気持ちいい”だったろ?」
「…うん…っ…ぁ、…はぁ…」

敏感な部分を優しく愛撫されて、わたしはぼんやりと意識が遠のいた頭でこくりと頷く。不意に視界の隅で動く影があり、ゆっくりと視線を動かすと…ちょうど、テレビの横に置かれた大きな棚のガラスに、わたし達の姿が反射して映し出されていた。脚を大きく開かされ、敏感なところを愛撫されてうっとりしている自分の姿に驚き、思わず目を見開いて反射的に身じろぎする。すると、ガラスに映った谷村さんは「あ、」と小さく声を漏らすと、わたしが逃げ出さないように脚の付け根を押さえたまま言った。

「…ばれたか」
「ちょ…も、もしかして、さっきからあそこで見てたんですか?」
「ああ。こっちからじゃ見えないし」

当たり前のようにさらりと言ってのける谷村さんに言葉を返そうとした瞬間、ゆっくりと愛撫されていたところを突然小刻みに指先で擦られて、わたしの腰は跳ねた。敏感なそこを蜜にぬめった指先がくすぐるように小刻みに刺激して、体の芯が蕩けるような快感に甘い吐息を抑えることができない。恐る恐る目を開けて棚を見れば、ガラス越しにわたしを見ている谷村さんと視線がぶつかる。ガラスの中の谷村さんは悪戯っぽく目を細めて唇の端を持ち上げると、空いていた左手でわたしの下着をするりと引き下ろして、そのまま脚から脱がせる。そして大きく脚を開かせると、満足気ににやりと笑った。

「やらしいな」
「そんな、…や…っ」

右手ではわたしの敏感な突起を絶えず小刻みに擦りつけながら、脚の付け根からそっと滑らせた左手でわたしの潤びた裂け目をくすぐる。くちゅ、という音とともに左手の中指がわたしの裂け目に少しだけ押し込まれた瞬間、わたしの腰は一際大きく跳ねた。

「あ…っあ…ああっ」

わたしの反応などお構いなしに、意地悪な指はわたしの裂け目の蜜を掬い取るようにしながら、ゆっくりと奥へ進んでくる。そして奥まで挿し込まれたかと思うと、谷村さんはその指をゆっくりとわたしのそこに出し入れし始めた。奥に押し込まれたかと思えば引き、引いた思えば奥を突かれ、また右手の指には敏感な突起を絶えず小刻みに弄られる。絶え間なくやってくる快感に思わず腰を浮かせると、出し入れされる中指の動きが加速し、徐々に律動的な動きになっていく。そして長い中指が奥に何度か素早く突き込まれた直後、浮いていたわたしの腰は跳ね…そして谷村さんの指を中に感じたまま、何度も小刻みに痙攣した。

「ああっ!あっ…はぁ…はぁ…」
「……と、こんなところか」

途端に体の力が抜けてぐったりと背を凭れると、背中にあった谷村さんの体がすっと身をかわしたので、わたしの体はそのまま谷村さんの凭れていた壁に倒れ掛かった。谷村さんはベッドから身を乗り出してサイドテーブルの引き出しを開けると、中にしまってあるコンドームの箱から一つを切り離し、そして開かれたわたしの間に膝立ちになる。そして羽織っていたワイシャツを脱ぎ捨てると、長い指で器用にベルトに緩め、締まった細い腰からスラックスを膝に下ろし、そしてウエスト部分に有名ブランドのロゴが入ったボクサーパンツも片手で引き下げる。そして切り離した袋を破って中から避妊具を取り出し、谷村さんの飄々とした表情からは想像もできないほど硬く、上向きに勃ち上がったそこに慣れた手つきで器用に装着した。

「こっちからだとよく見えるな」
「え…」

頭上から降ってきたからかう様な声に顔を上げると、谷村さんは僅かに開かれたわたしの脚の間に視線を下ろして楽しげに笑っていた。はっ、と慌てて脚を閉じようとした途端、谷村さんはわたしの両膝を掴むと、そのままぐっと大きく開かせた。

「あっ…や、やだっ」

先程の愛撫でとろとろに潤びきっているそこを強引に開かれて、わたしは思わず身じろぐ。しかし谷村さんはわたしの膝をしっかり掴んだまま、膝立ちでゆっくりとわたしの腰にその腰を近づける。そしてそそり立った避妊具の薄いゴムに包まれたそれをわたしの裂け目に合わせると、締まった腰を器用に動かしてわたしのそこからとろとろと滴る蜜を先端で掬い取るようにしながら擦りつけた。

「あっ…あ、や、…は、恥ずかしいです…」
「こら、とじるなって」

快感と同時に押し寄せる気恥ずかしさに脚を閉じようとするけれども、谷村さんの手はそれを許さない。わたしの両膝を大きく開かせたまま、腰を使って先端を擦り付けて…そして、少し角度をつけると、その切っ先をわたしの中にぐいと押し込んだ。熱を持った肉棒の先端を押し込まれて、思わず体がびくっと痙攣し、抑えきれない甘い声が喉から漏れる。谷村さんは瞼を閉じて「はー…」と小さく息を吐くと、その唇の両端を持ち上げて笑うと、呟くように漏らした。

「…最高、」

谷村さんはゆっくりと腰を使ってわたしの中に浅くそれを押し込んでは、そのままゆっくりと腰を引く。そして再び浅く突き入れて、浅く腰を引く。ゆるゆると入り口付近を出し入れされて、谷村さんのそれを呑み込んだわたしの裂け目は小さくきゅっと収縮する。甘くやんわりとした前後運動につられるように、わたしの腰も奥への刺激を求めて勝手に動いてしまう。先端だけをやんわり押し込まれて、ゆっくりと引かれて…切なく息を吐きながら、わたしの膝を抑えている谷村さんの腕にそっと触れたその瞬間、不意打ちのように奥までぐっと腰を突き込まれた。

「ああっ!あ…っ、…はぁ、」
「…ここにほしかったんだろ?」
「う……っ、あ…あっ」

谷村さんは根元奥深くまでわたしの中に腰を沈めたまま、意地悪な笑みを浮かべてわたしを見下ろした。狭いところを無理やり広げられて奥を擦られ、わたしは谷村さんの腕に手を伸ばしたまま体を仰け反らせて小さく震える。谷村さんは口元に笑みを浮かべたまま、引き締まったお腹をわたしのおへその下に擦り付けるようにして、根元深くまでわたしの奥にぐいぐいと押し込んでくる。脚を開かされているせいで、いつも以上に奥深くに谷村さんのそれが届き、怖いような気持ちいいような不思議な感覚に襲われる。

谷村さんは笑みを浮かべたままゆっくりと腰を引き…そして、また奥にゆっくりと押し込む。その視線はきっと谷村さんのそれを受け入れたわたしの裂け目に絶えず注がれていて、恥ずかしいけれども逃げ出そうにも背中は壁で、脚は谷村さんに強引に開かされ、行き場もない。わたしは壁に凭れたまま谷村さんのそれにゆっくりと奥を突かれて、深い快感にぼんやりとした頭で目を閉じた。

「谷村さん…」
「ん?」
「きもちいい、です…」

熱くそそり立った谷村さんのそれに、狭いところを何度も押し広げられ、奥を擦られて、頭の芯がとろけてしまいそうに心地良い。ぼうっとしていると、谷村さんの腰の動きが徐々に規則的になり、押し広げる動きから少しずつ突くような動きに変わってきた。そっと瞼を持ち上げると、谷村さんはわたしの両膝を掴んだ体勢のまま、瞼を閉じてゆるゆると腰を動かしている。その表情からは先程のような笑顔は消えて、神経を集中させているようにも見えた。ふと、谷村さんの喉仏がごくりと上下する。その男っぽい喉仏にあるほくろに見とれていると、谷村さんは溜め息のように、掠れた声を漏らした。

「あー…やべ…」

独り言のようにも聞こえるその言葉が耳に届いた瞬間、谷村さんがわたしの膝を掴む手にわずかに力がこもる。うっとりとした快感の中でゆっくりと瞬きをしたその瞬間、谷村さんはわたしの両脚を押し開くと、腰を奥深くまでぐっと突きこんできた。「っ…、あっ!」突然深いところを激しく突かれて、わたしの腰が小さく跳ね上がる。しかし谷村さんはお構いなしに、わたしの脚を限界まで開かせながら、打ち付けるように腰を動かして、わたしの深いところを激しく突き動かす。肌と肌がぶつかる音がぱんぱんと響き、ベッドのスプリングが鈍く軋みを上げる。その音の合間に、谷村さんの掠れた喘ぎ声が小さく聞こえた。

「…ッ…はぁ…」
「やっ…あ、あっ…ああ…っ」

谷村さんの表情からいつしか余裕は消えて、その顔には恍惚と苦悶が入り混じったような表情が浮かんでいた。わたしの膝を掴む手は筋が浮き、腰の動きも意図的なものから本能的で獣のような動きに変わっている。わたしの膝を掴み、大きく開かせながら、何度も繰り返しわたしの奥へ奥へと深く杭を突きこみ、奥に先端を擦り付ける。深いところを何度も熱い切っ先で擦られて、わたしの意識も遠のく。谷村さんは目を閉じたまま根元深くまで何度も何度も奥へ腰を突き入れると、呟くようにかすれた声で漏らした。

「…っ、…イキそ…」
「あっ…ん…っ、あ、ああっ!」
「っく……出る…ッ」

苦しげな声で吐息のように漏らした瞬間、谷村さんはわたしの膝を握る手にぐっと力を込めると、一際奥深くにぐっと腰を突き入れ、そしてそのままびくびくと本能的な動きで腰を前後に引きつらせて射精した。脚を大きく開かされたまま一番深い奥を突かれ、大量の精を膣内で吐き出され、奥にこすり付けられて、しびれるような快感に頭がぼうっと白くなる。わたしのおへその下に触れた谷村さんのしなやか腹筋が、痙攣するように何度か小刻みに収縮した。谷村さんは肩ではあはあと呼吸を整えながら、再び繋がった部分をじっと見下ろしている。その表情には吐精の余韻が残り、薄く開かれた唇にはそこはかとない色気が漂っていた。

「、…ふぅ…」

呼吸を整えながら、谷村さんはゆっくりと腰を引き、わたしの狭いところを押し広げていたそれをゆっくりと抜いた。わたしのそこから引き抜かれたそれはまだ硬さがあり、やや上向きに反り返っていた。薄いゴムの避妊具の先端で、わたしの中で大量に吐き出された精が白く溜まっている。生々しい精に気恥ずかしくて思わず視線を逸らすと、気付いた谷村さんが少し笑うのがわかった。

「…。なんか勘違いしてるみたいだけどさ」
「…え?」
「俺だけじゃないから」

思いがけない言葉に目を丸くすると、谷村さんの右手がまだ敏感なわたしの裂け目を指の腹でつうと撫でた。突然の愛撫に「あっ」と小さく声を漏れ、触れられたそこが反射的にきゅっと収縮する。谷村さんは左手の指の腹でわたしの裂け目を広げて、右手の中指の腹でわたしの裂け目を何度かくちゅ、とくすぐり、そこに潤びていた蜜を掬い取る。そして、その濡れた指先を見せ付けた。

「ほら。自分だってエロいの出てるだろ」
「え…や、やだっ」

谷村さんの指先に絡んでいたのは白っぽい色味の蜜だった。それはまさしく谷村さんの避妊具の先に溜まっているそれと同じで、わたしは思わず頬を赤らめて目を逸らす。谷村さんは楽しげに指に絡んだ蜜を眺めながら、言葉を続けた。

「よっぽど良かったみたいだな」
「う…」
「ま、俺もだけどさ」

谷村さんの引き締まった長い脚の間で、避妊具に包まれたそれは今もなお半分勃ち上がっている。谷村さんは長い指でそこから蜜にぬるんだ避妊具を引っ張ると、身を乗り出してベッドサイドにあったティッシュを数枚取り、精の残る避妊具を包んで捨てた。手早く事後処理をする彼の背中の向こうのテレビでは、先程のクイズ番組が続いている。画面に映し出される難読漢字はやっぱり読めなくて、くったりと壁にもたれたまま考えてみる。ぼうっと画面に映し出された『坩堝』の文字を見つめていると、谷村さんが意地悪っぽく笑ってこちらを見つめた。

「…数分前の俺達とか」
「え…」
「あとは、今捨てたそれも」

そう言って、ベッドサイドのゴミ箱に放られた白いティッシュを顎で指し示す。先程の光景を思い出して少し動揺したわたしに、谷村さんはからかうように言葉を続けた。

「よく言うだろ。興奮の、って」
「興奮の…、」

谷村さんの言葉を復唱しかけたところで問題の正解に気付いたわたしは、思わず頬を赤らめて言葉を呑んだ。そしてテレビ画面が解答が映し出されると同時に、谷村さんは笑いながら身を屈めてわたしの額に触れるだけのキスをする。裸の引き締まった背中がテレビの横のガラス棚に反射するのが見えて、わたしは少しだけ視線をとられ…そして、小さく溜め息をついて目を閉じた。


 

 



 白蜜の坩堝/20121125