夜はこれから 3さすがに毛布を被るのはやめさせて、代わりに俺が着ていた上着を彼女に貸してやることにした。上着を一枚羽織るだけでも体感は随分変わるようで、寡黙になっていた彼女もまた楽しげに表情を綻ばせていた。 (とりあえず、バンタムでも行ってみるか…) ここに花ちゃんがいれば確実に韓来になっていただろうが、毎度毎度韓来ばかりではさすがに飽きてしまう。彼女と二人きりで過ごすなら、雰囲気のいいバーの方が良いだろう。天下一通りを過ぎて泰平通りに差し掛かった辺りで、不意に彼女の携帯から短い音が鳴った。彼女は少し目を丸くすると、鞄の中から携帯電話を取り出した。 「あ。城戸さん、今新井さんと飲んでるみたいですよ」 「ん?城戸ちゃんから?」 「はい。ほら、このツイート…」 泰平通りを歩きながら、彼女の携帯電話の画面を覗き込むと、そこには城戸ちゃんらしき人物の投稿が表示されていた。 (へぇ、ツイッターねぇ…) 「結構皆もやってますし、面白いですよ」 「ふうん、なるほどね」 楽しげに話す彼女の言葉を聞きながら、ミレニアムタワーの角を曲がり、細い路地に入るとバンタムの看板が見えてくる。彼女は鞄に携帯電話をしまうと、俺の上着を羽織ったまま俺の背中にくっついてきた。バンタムの扉を開け、一歩足を踏み入れ…そして、俺は思わず目を見開いた。カウンターに並んで座っていたのは、見覚えのある二人の男だった。 (げ…) 「あれ?城戸さん!それに、新井さん!」 「ん?…あれ?何してんすか、二人とも」 一瞬すぐに店を後にしようとしたが、時は既に遅かった。彼女の声に、カウンターに座っていた城戸ちゃんと新井さんがこちらを振り返る。城戸ちゃんは少し驚いたように目を丸くしたあと、俺の隣の彼女の格好を見て…そして、訝しげに眉を寄せた。新井さんはすっと立ち上がると、入り口近くに並んで立つ俺達に向かって静かに頭を下げる。それを見て、城戸ちゃんも慌てて立ち上がった。 思いがけない展開に隣を見れば、彼女の目が新井さんを見てハートになっているのがわかった。 |
(お題:かっこいいオチ / 必須要素:ツイート / 制限時間:15分)